宗教学者・島薗進氏のオンライン私塾の第2シリーズ「新たなケアの文化とスピリチュアリティ」、第6回は「うたの力とスピリチュアリティ 〜苦難のなかにある人にうたがもたらす力について〜」をテーマに、特定非営利活動法人 和・ハーモニー音楽療法研究会理事長の中山ヒサ子さんをお迎えします。
メインスピーカーである島薗進氏の今回の講義に対するコメントです。
苦しみや悲しみのなかにある人に対して、生きる意欲を見失いがちな人々に対して、そしてストレスや孤立に苦しんで元気が出ない人々に対して、音楽がもつ力は大きい。歌が苦難からの救いや、癒しや解放のメッセージを伝えてくれる例は少なくない。多くの人が歌に力づけられた、辛いときはあの歌を聞きたいといった曲を思い浮かべることができるのではないだろうか。
たとえば、アレサ・フランクリンや本田美奈子の歌が知られている「アメイジング・グレイス」は讃美歌から来ている。サイモンとガーファンクルの「明日にかける橋」は黒人霊歌から来ている。ビートルズの「レット・イット・ビー」はポール・マッカトニーがマリアの受胎告知への反応を思ってつくったと聞いている。日本の唱歌や童謡は「魂のふるさと」や「失われた故郷への思い」を歌ったものが多い
音楽、とりわけ歌がもつスピリチュアルな力を考えることは、現代におけるケアの文化を考える上で意義深いものだと考える。今回は、音楽療法士としてホスピスケアを実践して来られた中山ヒサ子先生のお話をうかがいながら、現代のケアにおける音楽の力とスピリチュアリティについてともに考えていきたい。
ゲストの中山ヒサ子さんからは以下のコメントをいただきました。
音楽療法って何ですか? どんな効き目があるのですか? 耳の聞こえない人にはどうするのですか? あなたは音楽で人を癒しているのですか?・・・。
よく、音楽療法士である私に向けられる質問です。
始めに、いつの時代にもどこの国でも、文化的背景は異なるけれど人間の傍に常に存在する音楽について、音楽の持つ力・音楽と音楽療法、療法(セラピー)として意味することなどお伝えします。そして少しですが実践の紹介もさせて頂きます。
私は、祖母の自宅での看取りがきっかけで死生学を学ぶようになり、アルフォンス・デーケン師のもとで“札幌生と死を考える会”を立ち上げ、わかちあい(グリーフワーク)などの活動しておりました。そしてその道筋で、緩和領域の音楽療法士への路が示されました。
いろいろな出会いを感謝しています。そして、今回、島薗進先生とお会いでき、このような機会を頂きましたこと感謝しかありません。
現在、対面の実践である音楽療法自体がCOVID-19のために苦境に立たされています。その中で改めてホスピスの音楽療法士として自分に許される方法について、試行錯誤をしています。
最初の質問にあったことですが(音楽で人を癒しているのですか?)、音楽療法とは音楽の花束を一方的に手渡し慰めることではありません。自分で花を摘むのを援けるのだと、感じています。また、ほんの一瞬ですが音楽と共にクライアントの手に触ることは魂にさわることだということも、深められてきました。
最後に、チームのために歌を作ってしまったので、聴いてくださいませ。
進行は、前シリーズ「死にゆく人と愛の関係を再構築する技術」に続き、医療・科学ライターの小島あゆみ氏が担当。医療現場を取材するなかで培った知見を基にスピリチュアリティを学ぶお手伝いをします。
初めて参加される方にも有意義な内容にしますので、奮ってご参加ください。
お申込みいただいた方が当日お時間に都合がつかなくなった場合には、動画アーカイブでオンデマンド視聴が可能です。(動画配信開始後1週間ご提供いたします)。
19:00 島薗氏によるトーク
19:40 中山氏によるトーク(※録画を使用します)
20:30 休憩
20:40 ダイアログ/質疑応答
※プログラムの内容・順番・時間などは予告なく変更となる可能性がありますのでご了承ください。
Zoomミーティングを利用したオンラインイベントです。 お申込みいただいた方には、前日までに参加URLをメールにてお送りします。
チケットの購入期限は当日13月31日の18:00までとさせていただきます。
local knowledge 編集部(スタイル株式会社)
日本音楽療法学会認定音楽療法士。神経難病における音楽療法を考える会 世話人、日本死の臨床研究会北海道支部 世話人。元札幌大谷大学芸術学部教授(ピアノ演奏、及び音楽療法を担当)。専門領域は緩和ケア、神経難病(ALS)。著書に『[DVDブック]ホスピスケアと音楽』(春秋社)、『音楽療法ハンドブック—看護と福祉領域のための』(星雲社)、『初学者にもベテランにも役立つ音楽療法 効果・やり方・エビデンスを知る』(金芳堂)など。
1948年東京都生まれ。東京大学文学部宗教学科卒業。同大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。東京大学名誉教授。上智大学グリーフケア研究所所長を経て、大正大学教授。おもな研究領域は、近代日本宗教史、宗教理論、死生学。
『宗教学の名著30』(筑摩書房)、『宗教ってなんだろう?』(平凡社)、『ともに悲嘆を生きる』(朝日選書)、『日本仏教の社会倫理』(岩波書店)など著書多数。
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